人手不足倒産は2025年度に過去最多を更新し、日本企業の構造的な危機として顕在化しています。最新データを整理すると、状況の深刻さがより立体的に見えてきます。
◆ 結論:2025年度の人手不足倒産は「過去最多」
- 帝国データバンク(TDB):441件(前年比1.3倍、過去最多)
- 東京商工リサーチ(TSR):442件(前年比43.0%増、過去最多)
統計方法の違いで件数はわずかに異なりますが、どちらも過去最多を更新という点で一致しています。
◆ 何が起きているのか(2025年の特徴)
1. 従業員退職型が急増
- TDB:118件(過去最多)
- TSR:108件(前年比40.2%増)
「辞められたら事業が回らない」企業が増加。 特に中小企業では、賃金水準で大手に勝てず、若手が流出しやすい構造が露呈。
2. 人件費高騰型が激増
- TSR:195件(前年比77.2%増)
物価高・賃上げ圧力の中、 賃上げしたくても利益が出ず、資金繰りが耐えられない企業が増加。
3. 業種別では労働集約型が壊滅的
TDB・TSRの共通点として、以下の業種で過去最多が続出:
- 建設業
- TDB:112件(全体の25.4%)
- 技能者退職 → 工事受注できず → 連鎖的に倒産
- 道路貨物運送業(物流)
- ドライバー不足・高齢化・2024年問題の影響が直撃
- 飲食業・福祉・サービス業
- TSR:飲食64件(前年比178%増)、医療・福祉53件(76%増)
- 「退職 → 残った人の負荷増 → さらに退職」の悪循環
◆ なぜ2025年に急増したのか(背景)
● 賃金格差の拡大
大手は賃上げできるが、中小は価格転嫁が遅れ、 賃上げ原資を確保できず人材流出。
● 物価高・エネルギー高
利益率が圧迫され、賃上げどころか事業継続が困難に。
● 若手人材の不足
地方・中小ほど採用難が深刻。 応募ゼロの求人も珍しくない。
◆ 2026年への影響(速報ベース)
- 2026年1月だけで36件(TSR)
- 2026年度も高水準が続く可能性が高い(TDB)
一時的ではなく構造的な問題として定着しつつあります。
◆ まとめ
2025年の人手不足倒産は、 「雇えない」「辞める」「賃上げできない」という三重苦が同時進行し、 建設・物流・飲食・福祉など労働集約型産業を中心に過去最多を更新しました。
1. 建設業(112件:TDB、93件:TSR)
最大の被害業種。全体の約1/4を占める。
- 現場作業員・施工管理など資格保有者の退職が直撃
- 2024年問題(残業規制)で人員確保がさらに困難
- 受注しても人がいない → 工期遅延 → 資金繰り悪化
- 足場工事業者の破産例など、技能者不足+人件費上昇が複合要因
2. 道路貨物運送業(55件:TDB、運輸業70件:TSR)
ドライバー不足・高齢化・2024年問題の三重苦。
- 長時間労働の是正で稼働時間が減少
- 若手が入らず、ベテランが引退
- 人件費高騰・燃料高も重なり、採算が悪化
3. サービス業(TDB:老人福祉22件、飲食21件、派遣12件/TSR:サービス業170件)
2025年度で最も急増した領域。
- 飲食業:64件(TSR)で前年比178%増
- 低賃金・長時間労働で人材確保が困難
- 物価高で原価も上昇し、賃上げ余力がない
- 医療・福祉:53件(TSR)
- 介護職の離職が止まらず、事業継続が困難
- 労働者派遣業:12件(TDB)
- 自社の人材確保ができず、派遣先に人を送れない
4. 飲食店(TDB:21件、TSR:64件)
人手不足倒産の象徴的業種。
- アルバイト確保ができず営業時間短縮 → 売上減
- 大手チェーンとの賃金格差が拡大
- 物価高で原価上昇、価格転嫁が追いつかない
5. 老人福祉事業(TDB:22件、TSR:医療・福祉53件)
慢性的な人材不足が限界に到達。
- 介護職の離職 → 受け入れ人数を減らす → 収益悪化
- 夜勤要員が確保できず、施設運営が成立しない
6. 労働者派遣業(TDB:12件)
- 自社の採用難で派遣要員を確保できない
- 契約を維持できず売上が急減
◆ 全体像:なぜ労働集約型が壊滅的なのか
- 賃上げ圧力が最も強いのに、価格転嫁が難しい
- 人が辞めると即座に事業が回らなくなる構造
- 若手が入らず、高齢化が進む
- 中小企業は大手との賃金競争に勝てない
結果として、「辞める → 回らない → 売上減 → さらに辞める」という悪循環が発生。
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